すみだモダン×スタイルストア

もっと身近な、もっと使いやすい箸を。角に込めたこだわり[すみだモダン×スタイルストア]

2021年06月16日更新

有限会社大黒屋は、墨田区で30年以上にわたり江戸木箸を作り続けている老舗店です。サラリーマンから一転、なぜ大正初期から続く伝統の江戸木箸を作るようになったのか?

代表の竹田勝彦さんにお話を伺いしました。

種類だけたくさんあるが、使いやすい箸がない

―まずは会社設立の経緯についてお伺いしてもよろしいですか?

竹田さん:もともとは食器問屋のセールスマンをして全国を駆け回っていました。20年ほど働いて独立し、最初は箸の仕入れを行っていましたが「箸はずっと使い続けるものなのに、種類だけたくさんあって使いやすいものがない」と感じていました。「もっと指に合った箸があってもいいんじゃないか?」という思いがあったんです。

竹田さん:独立から4〜5年経ち、その気持ちが更に強くなったので、自分で八角に削った箸のサンプルを作って「こういう箸を作って欲しい」と墨田区や葛飾区の木箸職人さんのところへ持ち込みました。

当時、市場には丸や四角形の箸しかない時代です。「こんな面倒なことをしなくても箸は使える」となかなか取り合ってもらえませんでした。「こうなったら自分でやるしかない」と思ったのが箸づくりの始まりでした。

―もともとものづくりは大好きだったという竹田さん。専用の機械を購入しさっそく八角形の箸づくりに取り掛かります。

竹田さん:箸は道具だから機能性が一番大事だという想いで作っていました。完成した八角箸をデパートの催事へ出展したんです。お客様に箸への想いを説明すると、みなさん「すごくいい、使いやすい」と言ってくださって。大好評でした。

それからもっと使いやすい箸を作ろうと考えたとき「箸は3本指で支えて動かすのに、なぜ3本指(奇数)の角度の箸はないんだろう?」と思うようになったんです。三角形だと角が立ってしまうので、五角形の箸を作ろうとさっそく取り掛かりました。

徹底的に「角」にこだわり完成した江戸木箸

ー販売後の反響はいかがでしたか?

竹田さん:当時は五角形の箸がまだなく、新聞に掲載されると「握りやすい」と話題になりました。五角の面に指がしっかりとフィットし、安定感があるため特に男性から人気がありましたね。ただ、五角箸は「角が手にあたる」という声が多くあって、柔らかさを追求した七角形の箸を作ろうと思いました。

1膳1膳、完全な手作業で角材を削っていき箸をつくっていきます

箸は角材を削るところから始めるんですが、七角形って360度で割りきれないから角度の調整が難しいんです。失敗すると丸くなってしまう。木にも硬いところ柔らかいところがあり、硬さに合わせて力を入れたり弱めたり、手の感覚で作っているんです。機械ではできない繊細な作業なんですね。しかも箸は2本で一組。左右同じものでなきゃいけない。すごく難しかったです。世に出すまで2年くらいかかりました。

竹田さん:こだわりの箸を作り始めてから、他のメーカーでも同じような箸が増えました。うちのように手作業で先端まで面をとって作ることはできないだろうという自信がありましたが、お客様が混乱してしまうのはよくないということで江戸木箸の商標登録を取ったんです。箸帯の文字も私が書きました。

長年の経験により作ることができる七角箸

ー七角箸は”ラッキーセブン”や”七福神”など縁起がいい数字という理由からギフトに選ばれることも多いのだそう。

―その他にも東京スカイツリーの高さ634mにちなんで、一膳の箸の頭を六角、胴を三角、箸先を四角に削った「634(むさし)箸」などを手掛け更なる挑戦を続けています。遊び心を持ちながら、お客様の求めるその先をゆく箸を作っていきたいと竹田さんはいいます。

外国人や箸に関心がない人にも、奥深さを知ってもらいたい

―今後の展望をお聞かせいただけますか。

竹田さん:洋食にも使えるような箸を作りたいですね。以前、海外からいらっしゃったお客様になぜ箸を使うのか聞いたんです。すると「日本人が箸を使っているの見てカッコいいと思ったから」と。日本人の器用さを魅力に感じて箸を使いたいという人が多かったんです。ですので、海外の人でも使えるような箸を広めていければいいなと思っています。

竹田さん:箸はまだまだ「身近にあって遠いもの」という存在です。これまで箸に関心がなかった人にぜひ使ってもらいたいですね。自分の手にあったの使い心地のいいものを使って「箸って奥深いんだな」と感じていただけると嬉しいです。きっと感動すると思います。

墨田区曳舟には工房ショップがあり、様々な江戸木箸を見ることができます

―一本一本、丁寧に作られた江戸木箸。「使う人の立場になって考えないとものづくりはできない」と話す竹田さんが印象的でした。また、「手で作っているからこそ、最後まで責任をもちたい」という想いから箸の修理修復も行っています。妥協しないものづくりへの姿勢がお客様から愛され続けている秘訣なのだと感じました。

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文・構成/やまちの

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