インタビュー&ゲストコラム

中目黒の花屋 ex.(イクス) 田中彰さん「花や植物が好きという気持ち」前編

2016年02月24日更新

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お気に入りの花器に、
季節の草花を一輪だけ。

日々暮らす中で、ささやかでも
お花や植物がそばにあると、
ちょっと幸せな気持ちになれる
気がします。

そんな思いをもとに、
お花や植物のある暮らしの一コマを
綴れたらと思い、
「花一輪」コラムをはじめました。

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「こういうことをお伝えできたらなと
思っているんだよね」と話をしたところ
賛同してくださったのが、
スタイルストアでも母の日の
フラワーギフトや代官山店にてお花を
ご紹介させていただいている、
中目黒の花屋 ex.(イクス)
田中 彰(たなか あきら)さん。

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今回は、「お花のある暮らし」のことから
生い立ち、お花屋さんとして独立
した時のことなど、いろいろな
お話を伺いました。

愛用の道具やお花を活けるコツ、
ハードな仕事の中での健康維持法
なども教えてくださいましたよ。
全2回に渡ってお届けします。
どうぞお付き合いください。

小さい頃は、お父さんとベランダガーデニングで土いじり

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バイヤー中井(以下中井):お時間をいただきありがとうございます!お店、いつも本当に素敵ですね。今日はまず、田中さんの生い立ちからお伺いできますか?

田中 彰さん(以下田中さん):ありがとうございます。生い立ち・・・。なんか、すごい緊張しますね(笑)。出身は高知県高知市です。都会でもないけれど、市内だから、大自然に囲まれているとかも全然ないところで育ちました。

中井:小さい頃からお花は好きだったんですか?

田中さん:両親は花が好きで、中でも父はベランダガーデニングをしていて、土を自分で配合していろんな植物を育てていました。小さい頃からそれを手伝ったり、中学生になっても、父親が土いじりをしていたら横に行って一緒に楽しんだり。

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お店は中目黒駅から徒歩5分ほど。たくさんの素敵な草花が迎えてくれます。

中井:中学生くらいの年頃になっても一緒に楽しめる関係って素敵ですね。

田中さん:反抗期とかもあまりなかった気がします。幼少期から植物や土に触れていたから、そういうのって身体にすり込まれているんでしょうね。考えてみると、そんな風な環境で育ってきたことが今に繋がっているのかなと思います。

かといって、趣味の中でガーデニングが一番好きかというとそうでもなくて、どっちかというと釣りとかスポーツの方が好きでした。花が好きだから将来絶対花に携わろう!とは、当時は考えてなかったです。

社会に出てからのこと。

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中井:大きくなってからも土いじりは続けていたんですか?

田中さん:高校、大学、社会人になってからは、実はあまり植物に触れていませんでした。大学を卒業してからは、硝子メーカーに3年くらい勤めていました。硝子業界では世界で一番のシェアを誇る会社で、某スマートフォンの液晶硝子や建材などを作っています。大学を出た当時は、海外にも行くチャンスがあって、安定していて・・・という会社に就職しました。

でも、社会に出て仕事をする中で、いろいろな場面を経験して、初めて「本当は自分は何をしたいんだろう」とか、「世の中のためにどう役に立てるんだろう」と考え出したんです。

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仕事に対していろいろなことを考えていた時、友人が新しい事業を立ち上げることになって、一緒にやらないかと誘われました。そして考えた結果、それまで勤めていた会社を辞めたんです。

中井:それは花と関係ある事業ですか?

田中さん:いえ、花とは全く関係はありませんでした。ただ、そうやって自分事として事業を始めると、今度は「どれだけ強い思いでその事業をやりたいか」が何より大事なことに気がつきました。その時の事業は声を掛けていただいて始めたことだったので、それまでよりもさらに深く「本当に自分のやりたいこと」ってなんだろう、と考えました。

考えた結果、「人に幸せな気持ちになってもらいたい」というシンプルで基本的な欲求にたどり着きました。じゃあ何をしたら幸せになってもらえるんだろうと考えた時、花への思いとクロスしたんです。

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「幸せな気持ち」への基本的な欲求

中井:そこで花と繋がってくるのですね。何かきっかけがあったんですか?

田中さん:もともと花が好きだったことに加えて、大きなきっかけが二つありました。ひとつは、フラワーアーティストの東 信(あずま まこと)さんの仕事を見て、アートとしての花の魅力を感じたこと。人が花そのものに手を加えることによって生まれる「付加価値」にもとても魅力を感じました。それに正解がないことも面白いなと。

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もう一つは、地元高知へ帰省した時、「牧野植物園」を訪れたこと。牧野富太郎さんという方が作った植物園なんですけど、その方が名前をつけた植物がたくさんあるくらい、植物分類学の世界では著名な方です。地元高知で、アカデミックなアプローチで植物を極めた方がいるということに、とても影響されました。

あと、ずっと「本物」であるものを仕事にしたいと思っていて。

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中井:本物。

田中さん:そう、本物。枯れゆくものを愛でる精神は、日本では清少納言が最初に文章にしたそうで、何百年も前の人が「良い」と言って続いているものは「本物」なんだろうな、これからも変わらず大切にされていくことなんじゃないかなと思うんです。

花の世界に飛び込んでみて

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中井:花に携わりたい、と決めてからはどうされたんですか?

田中さん:南青山の某花屋に勤めました。大卒の人が中途で入ってくるのは珍しいらしくて、本社勤務も提案されましたが、「現場でやらせてください!」とお願いしました。

というのも、硝子メーカーに勤めていた時代、現場の方に指示・依頼をする立場だったんですが、実際の現場での実務を完全には把握しないまま指示せざるを得なかったのです。仕方ないところではあったのですが、個人的には「実際に自分が手を動かしたことがないのに指示や依頼をする」ということに違和感を感じていました。

だから、次に仕事をする時は絶対に自分がそれをできる人間になろうと思ったんですね。少なくとも自分ができないと人に伝えることもできないので。

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中井:実際にお花屋さんの世界に飛び込んでみてどうでしたか?

田中さん:ひとことで言うと大変。体力的にも。まず仕入れは早朝3時くらいからで、花の水揚げに何時間もかかったり、生き物なので世話をしながら、お客様の注文を受けて・・・と朝から晩まで働き詰めです。あと、独特の世界ですね。

中井:どういうところが独特?

田中さん:いろいろありますが、管理方法がアナログだったり、暗黙の了解として立ってなきゃいけないとか。

その花屋には二年弱くらい勤めていろいろ学ばせていただきました。学ぶことはまだまだあったけれど、30歳前には独立したいと最初から決めていたんです。

花を愛でることで、日々の暮らしが豊かになる

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中井:田中さんとお話していると、お花のことが本当にお好きなんだなと伝わってきます。

田中さん:月並みな言葉ですけど、花を愛でることで日々の暮らしが豊かになるということを実感して。大人になったら、豊かになるとか幸せになるって、結局自分がどう思うかなのかなと思って。花に触れて幸せになる自分の気持ちに気付いて、自分にとって大事な要素なんだなと思いました。

「生きているもの」ということも重要ですね。絵画や置物など、部屋に飾るものは大体無機質で命のないものですけれども、そんな中で、「生きているものを愛でる」ということがすごく面白いなあと思っています。生きているからこそ手間がかかるという点も愛おしいですね。

あとは、時間軸があるということがすごく魅力的だと思っています。花をお部屋に飾ることで四季の移ろいを感じられて、更にそれが日単位で枯れていく。

中井:時間が「可視化」されて見える。

田中さん:そうそれ!そういうところが面白いと思っています。

VISION GLASS LHを使用しています

VISION GLASS LHを使用しています。

次回は、お花屋さんとして独立した時のことや
体力的にもハードな中の健康維持法などを
お届け予定です。どうぞお楽しみに!

インタビューこぼれ話(その1) 田中さんの仕事道具

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お花屋さんの仕事道具といえば花鋏。
田中さんは「TAJIKA」の花鋏を
使われています。

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1点1点職人が作っているこちらは、
手にしっくりとなじんで切れ味も良く、
とても使いやすいのだそう。
あとメンテナンスも職人さんにきちんと
していただけるので、安心して使い
続けられるのも魅力とのことでした。

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佇まいも素敵ですよね。

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実は私も会社で、こちらとは形が違いますが
TAJIKAさんの鋏を愛用しています。
切れ味も抜群で、鋏を入れるのが楽しい。
使うたびにちょっと気分が高まる
鋏だなと日々感じています。

田中 彰(たなか あきら)さんプロフィール

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BOTANIC Inc. 代表取締役。
東京・南青山の花屋での修行を経て、
BOTANICをスタート。
2013年7月、東京・中目黒に花屋
ex.(イクス)」をオープンされました。

ぜひご覧いただきたいのが、
田中さんのインスタグラム
素敵なお花や装飾がたくさんで、
見ているだけで幸せな気分を
おすそ分けしてもらったような
気持ちになります。


 

第一回 花や植物が好きという気持ち
第二回 大切にしていること


 

このコラムを書いた人

中井 明香

スタイルストア バイヤー

中井 明香

いつもの暮らしがちょっと心地良くなるようなものやこと、つくり手の思いやものづくりのストーリー、その地域ならではの話をお伝えしたいなと日々考えています。

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