インタビュー&ゲストコラム

境界を通して知る自分の価値観。「NO PROBLEM」の考え方

2017年06月23日更新

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VISION GLASS NO PROBLEM」は、
VISION GLASSを輸入販売する
國府田商店のおふたりが始めたプロジェクト。

キズや汚れのある製品を
B品」や「アウトレット品」として
安く売るのではなく、買い手が実際に
見て「これならOK」と認めたものを
定価で購入できるという試みです。

前回は國府田典明さんと小沢朋子さん
ご夫妻がインドの理化学ガラス製品メーカー
がつくるVISION GLASSに惚れ込み、日本に
輸入するに至ったエピソードをご紹介しました。

今回はこの「VISION GLASS NO PROBLEM
について詳しくご紹介します。

大好きなグラスだから、キズや汚れも愛おしい

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シンプルな佇まいや汎用性の広さに
すっかり魅了され、輸入販売を始めたおふたり。
しかし、輸入したグラスは半数以上がいわゆる
B品だったそうです。

「これではまずい」と本社に掛け合って
検品を厳しくしてもらい、B品の割合は23
まで下がりましたが、そこが下げ止まり。

はるばる日本までやってきたのに市場に出回る
ことのないそれらは、オフィスの中でどんどん
面積を広げていきました。

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キズや汚れはカテゴライズされ、それぞれ名前がついています。

本来であればB品はアウトレット価格で販売する
のが一般的ではありますが、おふたりには
そうしたくない理由がありました。

それは、VISION GLASSを日本で取扱う
代理店として名乗りをあげた理由が
VISION GLASSが好きだから」という
シンプルな想いであったこと。
そして「生涯を通じてVISION GLASS
関わっていきたい」と、強い意志がある
ことです。

VISION GLASSを製造しているBOROSIL社は
当初は5割以上がB品だったものを3割まで
減らしてくれた。だからこそ、その努力に
しっかり向き合いたいと思ったそうです。

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「そういうとかっこよく聞こえるかもしれま
せんが、これ以上うるさく言って、じゃあ
日本には輸出しないよと言われたら悲しい
という理由ももちろんありました()
(小沢さん)

日本ほど製品に対する均一さや精巧さに
厳しい国はないと言われます。
VISION GLASSは、B品でないものも決して
均一ではなく、11つのグラスに個性が
光るところも魅力のひとつ。
同じサイズのグラスでも、じつは高さが
微妙に違ったりもしています。

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私たちにとってのキズは、インド人には「NO PROBLEM」

小沢さんは年に1度はインドに出向き、
検品を厳しくしてほしいことを伝えている
そうですが、私たち日本人にとってのB品が
インドでは「NO PROBLEM」であることが
ほとんどなのだそう。

NO PROBLEM!」(問題なし!)という言葉は
インド人が良く使うフレーズだそうで、
お国柄と言ってもいいのかもしれません。

明らかに欠陥であれば確かに価格を下げても
いいのかもしれませんが、つくり手と売り手、
買い手の「正規品」と「B品」の境界が、
それぞれ異なっていることからくる、
VISION GLASSのような例も多々あります。

そんなことから、今でも全体の3割はある
というB品は、日本とインドの感覚の違いだけ
でなく、製造元と販売業者の価値観の違いでも
あるのではないかという結論に至りました。

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左から、小沢さんと國府田さん、そしてプレス担当の板垣潮美さん。

値下げして在庫をさばくのはそう難しいこと
ではないかもしれません。
でも、そうするとB品は定価では売れない
「ダメなもの」と認めることになってしまう。

そうではなくて、
「私はこれくらいのキズはぜんぜん気になり
ません。NO PROBLEM!」
と納得して購入してくれる人がいるなら、
それはもはやB品ではないのではないか。

そう気づき、オフィスに積みあがったダンボール
の中にある「B品」を「NO PROBLEM品」と
名付け、定価で販売する試み
VISION GLASS NO PROBLEM」を始めたのが
2年前の2015年のことでした。

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どこまでをOKとみなすかは、人それぞれ

プロジェクトのスタートにあたり、
小さな展覧会を実施。

展示やトークイベントで
VISION GLASS NO PROBLEM」の考えを伝え、
買い手がどこまでのキズや汚れなら許せるかを
直接聞く機会を設けました。

「そうしたら、案外みなさん小さなキズは気に
ならないようでした。むしろ味や個性とみて
くれる方も。とはいえ買い手と私たちの間に入る
販売業者さんはキズのある商品を仕入れたくない
こともあるはずです。これはどの程度の
NO PROBLEM具合なのかを実際に見てもらうのが
一番だなという結論に至り、NO PROBLEM品は
手に取って見てもらってから買っていただくよう
にしています」(國府田さん)

実際、ご自宅やケータリングではNO PROBLEM
を使っているおふたり。
インドにあるBOROSIL社の人たちが言うように、
何年使っても確かにNO PROBLEMなのだそう。

もちろん、性格にも寄りますので
「一点の曇りもないピカピカのグラスが好き」
という人にはBIG PROBLEMなのかもしれません。
どこまで許せるかは個々の価値観次第ということ
ですね。

現在、國府田商店では御徒町にあるオフィスを
水曜日の夜3時間だけ開放し、NO PROBLEM
の展示販売会を行っています。

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1番人気はこの「ロゴ位置不備」。本来は底に付くはずのマークがグラスのフチなどに付いています。

製造工程のどこでつくキズなのかなども展示したり、
ユニークな名前を付けたりなど趣向を凝らすことで、
NO PROBLEM品にこそ魅力を感じてくれるファンも
定着してきました。

また、オフィスの一角にはどの程度まで許せるか、
自身の感覚で1票を入れられる投票所も

程度によってレベルを14段階に分けていますが
実は私は「ズタズタ」とおふたりが表現する
最大レベルでもOKだと感じました。
実際に最も投票数が多かったのも最大レベルの
ところ。

VISION GLASSのNO PROBLEM品は、
私にとってはすべてNO PROBLEMなようです。

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そんな経緯でスタートしたこのプロジェクト。
次第に賛同してくれるメーカーやメディアが
増えていき、現在開催されている
NO PROBLEM展を行うに至ったというわけです。

さまざまなメーカーのB品に対する考え方や、
向き合い方を知ること。
キズや汚れがあっても使用にあたっては問題の
ないものをあえて購入して使うという寛容さ。

そういったことを、この企画展で知ることで、
私たちの暮らし方やお金の使い方が、
少しだけ変わるかもしれません。

 

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