すみだモダン×スタイルストア

作る人も、使う人も元気にしたい。長年の願いをかたちにした6代目の想い[すみだモダン×スタイルストア]

2021年03月17日更新

墨田区両国で100年以上続く革小物製造の老舗・東屋。熟練の職人さんとともに、高い技術で財布をはじめとしたレザーグッズを作り続けています。長らく他社ブランドの委託製造(OEM)を手掛けてきましたが、創業から100年を迎えたのを機に、念願の自社ブランド「made in RYOGOKU」をスタートさせました。東屋の6代目である木戸麻貴さんに東屋の歴史や、代々受け継がれてきた想い、すみだモダン認証を受けたオリジナルパターンの「まるあ柄」についてお話を伺いました。

ちいさい頃から、将来の夢は「がまぐち屋」

―東屋の歴史について教えてください。

木戸さん:東屋は明治38年に私の曽祖父が創業しました。創業時から場所は変わらず、両国の竪川のそばです。2代目の祖父は戦死してしまいますが、残された祖母が事業を続けるために番頭さんと再婚し、3代目はその番頭さん、4代目が祖母、5代目は父、そして私と代々家業を受け継いできました。

木戸さん:最近になってわかったのですが、祖父が戦地から送った手紙を、祖母がずっと大切に保管していたんです。そこには「この業界が続く限り事業を続けてほしい」と綴ってありました。それを知ってか知らずか、私の幼稚園の卒園アルバムには「将来の夢は、がまぐち屋」と書いてあったんですよ。祖先からの想いを自分の使命として感じています。

木戸さん:東屋と袋物の歴史は、東屋に併設された「袋物博物館」でもご覧いただけます。ここは、墨田区の産業PRと地域活性を兼ねた「すみだ3M運動 小さな博物館」事業の一つとしてオープンしました。

「120年前のがま口など珍しい物も展示していますよ。」そういわれて見せていただいたがま口財布は、木戸さんの祖母である4代目の友人のがま口職人さんのお父様が手掛けたのだといいます。今の時代に見ても、作りの丁寧さと形の美しさがわかる逸品です。

なんとしても職人さんたちを守りたい

―創業100周年を記念して自社ブランドをスタートさせたとお聞きしましたが、どのような経緯で立ち上げたのでしょうか。

木戸さん:オリジナルブランドは「作り手と関わってくださる皆さんがハッピーになるものづくりを」というコンセプトです。職人さんたちは、ほとんどが4代目の時代からの長いお付き合いになります。職人の“おじちゃん”たちは、まるで親戚のような深い関係です。

木戸さん:でも、職人さんはみなさん高齢になって、後継者もなかなかいない状況です。だからこそみなさんを守りたいという気持ちが強いんです。職人さんとして長く続けていただきたいと思いますし、それは、うちの責任でもあるんです。
自社ブランドを立ち上げた現在もOEMでの製造はうちの主力。ですが、OEMだと依頼主の都合で急に仕事がなくなってしまうこともあって。そんなときにいつもよりも少し高い工賃でオリジナル商品を作ってもらっています。そういうことで職人さんをなんとか守っていけたらと思っています。

―製品を見ていると、職人さんたちの丁寧な仕事ぶりがよくわかります。

木戸さん:革の裁断は内製化していて、出来上がったパーツを職人さんにお渡しして、一人の方がそこから製品の完成まで手掛けます。現在制作をお願いしている職人さんは5人ほど。

職人さんによって得意分野が異なるんです。製品のヘリの部分を切りっぱなしにせず、薄く漉いて内側に折り込む「縁返し」や、角の部分を丁寧に寄せてのり付けする「菊寄せ」といったそれぞれの技術が光る職人さんがいます。工数も多いのですが、丁寧に仕立てています。

このがま口の口金の部分にも革を巻いているんです。これはとても難しい技術で、うちでは一人の職人さんしかできません。他でもなかなか見かけないものだと思いますよ。

「まるあ柄」を、元気な日本のアイコンに

―すみだモダン認証を受けたオリジナルの「まるあ柄」も、創業100周年で制作されたんですよね。

木戸さん:そうなんです。ある時、東屋創業時に配った「袋物卸 東屋」と染めてある手ぬぐいを見つけた、とご近所さんが持ってきてくれたんです。それが100周年を迎える少し前。それを見たうちの母の希望で、100周年でも手ぬぐいを作ろうということになりました。

袋物博物館では、創業当時にご近所に配られたという手ぬぐいと、まるあ柄の手ぬぐいが並んでいる

木戸さん:当初は手ぬぐい用にデザイナーさんに制作してもらったのが、この「まるあ柄」です。3種類の大きさの水玉模様に、ところどころ平仮名の「あ」の文字が描かれています。

木戸さん:近くを流れる隅田川や、東屋をイメージしてデザインされています。「あ」の文字は、平仮名の1文字目であり、平仮名は日本独自の物です。日本の粋を感じながら楽しく元気なブランドにしていきたいという願いが込められています。

―周りの方の反応はいかがですか?

木戸さん:最初は露出が少ないから「本当に売る気があるの?」なんて言われることもあったんです(笑)。私としては続けることにこそ意味があると感じています。

墨田区の若手経営者育成事業「フロンティアすみだ塾」で出会った仲間と百貨店に出展するなど、ブランド立ち上げから7年でお客様と触れ合う機会も、応援してくれる人も増えました。私の友人たちも使ってくれていて、「見るたびに、麻貴ちゃんが頑張っているから私も頑張ろうという気持ちになる」と言ってくれて、すごくうれしいですね。

木戸さん:財布などの革小物にはシンプルなデザインを求める人も多いから、まるあ柄は難しい柄ではあるんです。雑貨やステーショナリーだともっと手に取ってくれる人が増えるかな、とも感じています。

昨年は、屋形船の船宿さんとのコラボレーションで、ピンクのまるあ柄の屋形船を作りました。将来的には革小物以外にも、まるあ柄のラインナップを増やして、他の企業ともコラボレーションできたらいいなと考えています。

―すごく力強い柄ですよね。革小物以外の展開も見てみたいです。

木戸さん:これは私の夢ですけれど、人に集まってもらえるような場所をどこかに作って、そこではまるあ柄のパッケージのお菓子が売っていたりとか、雑貨があったりとか…そういうことができればいいと思っています。まるあ柄で皆さんに元気になってもらって、日本を知ってもらって、この両国を、そしてすみだのまちを活性化したいんです。

もちろんものづくりはできる限り続けたいですが、それだけだとこの先どうなっていくか先を見通すのは難しいかもしれない。この柄が東屋だけのものではなくなって、アイコン的な存在になるといいですね。

東屋で代々受け継がれてきた想いを形にしようと活動する、木戸さん。製品には職人さんへの愛情と東屋への愛情が込められています。まるあ柄のお財布を手にすると、ふわっと気持ちが明るくなる気がするのは、そんな愛情を感じ取っているからかもしれません。

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文・構成/シマサキアヤ

このコラムを書いた人

スタイルストア 編集室

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