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すみだモダン×スタイルストア

技術力と企画力の化学反応で生まれる、新しい風[すみだモダン×スタイルストア]

2021年06月30日更新

広告やテレビでも度々取り上げられる、シックな色使いと開放感のある履き心地の布草履「MERI(メリ)」。MERIを手掛けるオレンジトーキョー株式会社 代表の小高集さんは、ポロシャツの襟などのパーツを作る「小高莫大小(こだかメリヤス)」の三代目でもあります。MERI誕生のきっかけは、青森の職人さんからの一本の電話でした。

「MERI」の源流は墨田区の地場産業、メリヤス

―小高さんは、小高莫大小の三代目でもいらっしゃるんですよね。

小高さん:そうです。小高莫大小は祖父が創業して、私で三代目になります。会社は少し前に江東区に移転したんですが、元々は墨田区にありました。私は生まれも育ちも両国です。墨田区は東京のメリヤスの一大産地で、私が小さい頃はこの辺にメリヤス屋さんがたくさんありました。

小高莫大小は、ポロシャツの襟や袖などの「リブ」を専門に編んでいるパーツ屋です。アパレルメーカーから依頼を受けた他のメリヤス屋さんにパーツを納品する、いわゆる下請けの工場なんです。MERIは、もともと小高莫大小で立ち上げたブランドです。

―「MERI」のような新しい事業を始めたのは、どうしてですか?

小高さん:バブル崩壊後にアパレル業界が激変して、製造現場があっという間に中国に移りました。うちでも色々と手は打ったものの、売り上げが落ちていくスピードに全然追いつかなかった。そこで、オリジナル商品を作って消費者向けに売ることしかないと考えたんです。

それまでパーツだけを作ってきたから、最終製品にするために縫ったりする技術を持っていませんでした。でもやるしかない。ブックカバーやティッシュケースを作ってはネットショップに出しましたが、それでは全く売り上げの助けにならなかったんです。

布草履との出会いは偶然受けた一本の電話

―そこから布草履に出会ったのには、どんなきっかけがあったのでしょうか。

小高さん:自分たちで製品を作ろうと決めてから2年ほど経った頃でした。本当に偶然なんですが、青森で布草履を作っているグループの方からの電話を受けたのがきっかけです。

東北地方はもともと縫製工場がたくさんある土地で、彼らはそこから出た余りの反物を裂いて布草履を作っていたそうなんです。でも、その縫製工場もなくなっていって材料の布の入手が難しくなった。そこでネット検索でうちを見つけて、余った反物を送ってくれないかと電話をくれました。電話口ですごく困っているのが伝わってくるんですよね。仲間のメリヤス屋さんにも声をかけて、余った反物を集めて送りました。

そうしたら後日、お礼に一足の布草履を贈ってくれて、それを履いてみたらすごく気持ち良くて。しかもメリヤスでできている。「これは商品化できるんじゃないか」と直感して、今度は逆にこちらから「開発に協力してくれないか」と連絡しました。

―すごく運命的な出会いだったんですね。

小高さん:そうですね。自分たちで考えている範囲では、布草履は思いつかなかったと思うので。

小高さん:そこから布草履専用のニット紐の開発に取り組みました。こちらの工場で幅や伸縮性を変えて紐を編んでは青森で布草履を試作してもらって…ということを繰り返して、完成には1年ほどかかりました。

そうして出来た布草履をネットショップに出したら即完売。今まで自分たちで作ってきたものと比べると圧倒的な反応の良さなんです。これはいけるかもしれない、と感じました。

―MERIの誕生ですね。

小高さん:その時はまだ「MERI」という名前もついていなくて、ブランド化するなんて頭にありませんでした。

当時の価格は3600円。現在のMERIの価格と比べると半分以下ですが、それでも他の布草履と比べると高かった。編むのに3時間くらいかかる上に、作れる人は青森にしかおらず、一月で50足ほどしか作れない。それでは会社の売り上げを良くするほどのインパクトはありません。

じゃあいくらならビジネスになるの?と計算すると、8000円くらいにしないと無理だとわかりました。そこで、その値段で売るためにはどうしたらいいか色々と考え始めたんです。

デザインの力で掴んだチャンス

―そこで製品のブランド化という発想に至ったんですね。

小高さん:ブランド化を考えた一番のきっかけは、パリで行われるインテリアデザインの見本市「メゾン・エ・オブジェ」でした。最初の挑戦では審査に落ちてしまったんです。商品は悪くないと思うのになんでだろう、と。審査に必要な書類のクオリティが正直低くて、カタログなんかも付いてなかった。それじゃあ通らないですよね。

そこで、デザイン会社の人を紹介してもらって、カタログの制作を依頼することになりました。彼らと話をしていく中で「ブランディングからやりませんか」と言ってくれたんです。ブランド名やロゴを決めていくところから一緒にやっていくことになりました。

MERIのターゲットは40代の女性と設定しました。その層は室内履きに年間5000円かけるというマーケティングデータがあったんです。MERIは手編み・洗えるという付加価値があるので、8000円という価格設定でもいけるんじゃないか、と。デザインのテーマはその層が好む「北欧」にしました。

小高さん:そんな作業を経ていよいよカタログができて、翌年メゾン・エ・オブジェに再挑戦したときには審査をクリアして出展が決まりました。最初は半信半疑だったんですが、デザインにこんなにも力があるんだと実感しましたね。

出展した時に、現地では海外の方よりも、日本のバイヤーさんとつながりができたのは大きかったですね。帰るころには日本のほとんどの百貨店さんとのつながりができていました。

―販路が広がる道筋がついたときに、ネックになったのは生産体制でしょうか。

小高さん:メゾン・エ・オブジェ以降は、売り上げがどっと上がって生産が追い付かなくなりました。職人さんが増えないと生産が増えないんです。青森で生産できる量は決まっているので、とにかく自分たちで職人を育てないといけない。直営店の「MERIKOTI」では布草履づくりのワークショップを開催しているんですが、実は、元々のワークショップでのミッションは職人さんを一本釣りすることでした。今はそんなことないですよ。現在もワークショップ出身の方は活躍しています。

やっと出来た商品は、私が夏場に2か月くらい会社をあけて全国の百貨店を回って販売していくんです。販売に立つ人間が私しかいなくて、とにかく忙しかったですね。

―販売で直にお客さんと触れ合うということは、それまでに経験のないことでしたよね。

小高さん:それまでは下請けの下請けで、自分たちが作った襟がついたポロシャツを着ている方とすれ違っても気付けないんです。納入した襟がどのブランドの服に使われているのかもわからない。日々注文された何センチ×何センチの長方形を作り続けるわけです。やはりどこか面白くなかった。百貨店の店頭に立って直にお客さんの声が聞けたのは、大きなモチベーションになったし、励みになりました。

すみだの老舗の技術力×オレンジトーキョーの企画力

―2013年に小高莫大小からMERI事業を分社化した形で「オレンジトーキョー」を設立されました。

小高さん:翌年の2014年に成田空港のお店を開けることが決まっていて、そのために人を雇わなければいけない、という事情もあって。私はMERIのほうにつきっきりだったし、だったら外に出たほうが集中できるんじゃないか、ということで、家業を抜ける形で立ち上げました。

小高さん:2014年の9月には両国の北斎通りに直営店の「MERIKOTI」もオープンしました。先ほどお話したワークショップでは、コロナ前には海外のお客様にもかなり多く来ていただいていました。今では、もっと学びを深めたい方に「マスターコース」や「講師コース」も開いています。受講者の方には、すみだモダン認証を受けている「JonoJono」というニットヤーンを使って布草履を作ってもらっています。

―「JonoJono」をはじめ、MERI以外にもオリジナル商品がありますね。

小高さん:やっぱりメリヤスの出身なので、繊維に関係しているもので展開していきたいんです。一時家業から離れたんですが、2020年3月から小高莫大小も私が見ることになりました。これからは、今まで以上に小高莫大小の製造力とオレンジトーキョーの企画力を合わせて商品を作っていきたいと考えています。

小高さん:オリジナル商品で作っているパッチワークのストールは、縫い目がフラットなのがポイント。これには高いミシンの技術が必要です。墨田区にある株式会社和興さんに縫ってもらっています。

―墨田区の他の事業者とのコラボレーションもされているんですね。

小高さん:私自身、若手後継者・経営者を対象とした墨田区主催の講座「フロンティアすみだ塾」の4期生です。和興の國分さんはこの塾の12期生なんですよ。他にもMERIのオプションで底に貼る滑り止めがあるんですが、これもこの塾でつながりができたサトウ化成さんに作ってもらっています。

小高さん:フロンティアすみだ塾では業種はそれぞれ違うけれど、みんな二代目や三代目で同じ立場。悩んでいるところはだいたい一緒で。それまでは不安でしかなかったんですけど、悩みを共有できたというのは本当に良かった。卒業生が200人くらいいて、困ったときにはいろいろな業種の人に相談ができます。

それから、去年から墨田区のブランドを集めて「オレンジマルシェ」というポップアップショップを企画しています。作るものは素晴らしくても、どうしても売るということがハードルになる。オレンジマルシェをきっかけに、他の墨田区のブランドにも色々な方とつながりを持ってもらえたらいいなと思っています。

―次に挑戦したいことはありますか?

小高さん:現在、オンラインでワークショップを開こうと計画中です。来日できない海外の方にも教えられるし、リアルより多い人数を一度に教えられるかもしれない。コロナ禍でオンライン通話などのツールを使いこなせる人も増えていますよね。これはチャンスだと思っています。

小高さん:MERIは2021年にモデルチェンジして履き心地を向上させましたが、これが終わりではないと考えています。今でもすごく履き心地はいいんだけれど、もっと「しっかり足を支える」というところを追求したい。産学官連携などして、科学的なアプローチでエビデンスが取れないか、と。これからさらに小高莫大小からの技術協力が密になるので、オレンジトーキョーとの化学反応でさらに改良できないかとも考えています。

大切な物を残していくために、変化を恐れないこと。そんな小高さんの姿勢は、MERIをはじめとしたオレンジトーキョーの製品からも感じ取ることができます。MERIも進化を続けていますが、誕生以来変わらずにこだわるのは、職人の手編みでしか作れない履き心地です。足指が解放されるような気持ち良さをぜひ体感してみてください。

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文・構成/シマサキアヤ

このコラムを書いた人

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