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世界にファンを持つ、根岸産業の如雨露。盆栽用から広がる用途とは

2023年12月22日更新

墨田の地で70年以上の歴史を持つ如雨露(ジョウロ)メーカー根岸産業で3代目として奮闘するのは元システムエンジニアの根岸洋一さん。根岸産業の盆栽用如雨露は1点1点手作りで、日本国内だけではなく世界各国にファンを持っています。

一方でより多くの人に如雨露を使ってもらいたいという思いから、盆栽用以外の用途でも開発を進めている根岸産業。そんな根岸産業代表の根岸洋一さんにお話を伺いました。

ー会社の歴史について教えてください。

根岸産業は77年前、祖父が終戦を迎える少し前に始めた会社です。当時は物がなく、瓦礫などを集めて物を作っていた時代で、祖父もトタンを使ったモノづくりを始めました。当時から如雨露がメイン商品ではありましたが、その後、安いだけでは物が売れない時代に突入し始めたことから2代目となった父が銅などの高い金属を使用した高級感のある如雨露を作るように。

銅には殺菌力があり水を腐りにくくし、また、水に溶け出す銅イオン効果により、盆上の苔の生育がよくなる特徴があるなど、盆栽に最適な金属です。盆栽協会などと一緒に開発を進め、現在のような盆栽用の如雨露中心のラインアップになりました。

ー根岸さんご自身も会社を継ぐことを幼少期から意識されていたのでしょうか。

小さい頃から工房で遊んで育ち、父が如雨露を作るところも見て育っていたので、中学の頃には自分で如雨露を作れるようになっていました。大学進学後も、如雨露作りからは離れることなく、学業と並行して行っていましたが、その後はシステムエンジニアとして働き始めたんです。2010年に父が亡くなったことを機に、システムエンジニアの仕事を辞め、如雨露作りに専念することを決めました。

システムエンジニアの経験を活かした新しい取り組み

ー家業を継がれてから、新しく取り組み始めたことなどはありますか。

BtoC(一般消費者を対象にしたビジネス)に力を入れるようになりました。具体的には如雨露作りの様子を見てもらう機会を日本国内だけではなく海外でも作り、如雨露について知ってもらう機会を増やしたんです。

また、システムエンジニアとしての経験を活かして、如雨露に関する情報を自動で集めてデータベースで管理するようになったのも大きな変化だと思います。

ー直近で、新しい取り組みによる嬉しい変化などはありましたか。

毎年、伝統的工芸品産業振興協会のコンテストに新作を出品しているのですが、4年連続で入選することができました。これはお客様からの声を積極的に取り入れるようになったからこその結果だと思っています。入選できなかったら商品化はしないと決めて、開発に取り組んでおり、2022年は「シームレス」をテーマに新作を開発中です。

また、SNSでの発信も継続して行ったことが嬉しい縁を繋げてくれました。たまたま、スイスの「Negishi Sushi Bar」というお店で働く「ジョウロ」さんと繋がり、お店に遊びに行ったところ、オーナーが如雨露を気に入ってくれ、お店の一角で販売してもらえることに。さらにオーナーが経営する約40のレストランでも販売していただけることになりました。スイスは雑貨屋さんなどのお店は早くに閉める文化があるため、レストランの一角で雑貨などを販売する文化があるようです。SNSでの出会いが、海外での販路拡大に繋がったことはとても嬉しい出来事でした。

多様化する如雨露のこれから

ー根岸さんが大事にされているものづくりのこだわりについて教えてください。

大事にしていることはお客様が満足するまで付き合うこと、です。日本国内だけではなく世界中にお客様がいるので、一人一人の希望やニーズに合わせて作ることを意識しています。

また、修理ができる如雨露というのも根岸産業ならではです。手間はかかりますが、修理してほしいという要望があればきちんと修理し、長くお気に入りの如雨露を使っていただけたらと思っています。

ーこれから挑戦したいことなどはありますか。

やりたいことはたくさんあります。一つは3Dプリンターを使って如雨露を作ってみること。ただの如雨露ではなくて、きちんと機能性があって、みんなが使いたくなるような如雨露を3Dプリンターで作りたいです。

また、世界各国にお客様がいるので、各地で修理が対応できるような状況を作ることも考えています。今はイタリア・スペインにも弟子がいて修理対応をしているのですが、他の国にも増やしていきたいですね。オンラインで技術や知識などのノウハウを教えることも可能になっているので、少しずつ動いていきたいです。

ーまだまだこれからが楽しみですね。

これまでは如雨露=植物に使うものというイメージが強く、実際に盆栽用を中心に開発してきました。しかし、如雨露の使用方法はこれからどんどん多様化していくと思っています。

例えば、ロウリュと言われる、サウナストーンに水をかけて行うサウナ風呂の入浴方法がありますが、ここでも如雨露が使えたらパフォーマンス性のあるロウリュを楽しんでいただくことが可能になります。フィンランドのサウナ文化を日本流にアレンジして楽しんでもらえないかと考え、現在サウナストーンを輸入している会社と一緒に企画・開発中です。

その他にもコーヒーのドリップポットに如雨露の技術を取り入れることで新たなコーヒーの味を出せないかといったプロジェクトも進行しています。

これからいろんな場所で如雨露を使っていただけるよう、引き続き、如雨露の開発に積極的に取り組んでいきます。

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文・構成/松本佳恋

このコラムを書いた人

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