すみだモダン×スタイルストア

嘘のないものづくりへのこだわりから生まれる、美しい国産傘

2022年11月02日更新


日本で販売されている傘の99%は海外生産という状況の中、国内生産にこだわって傘作りを行っているのが株式会社イー・ビー・アイです。今回は株式会社イー・ビー・アイの市瀬さんに、会社の歴史や国内生産にこだわって傘を作り続ける理由、ものづくりへのこだわりについてお話しいただきました。

東京で傘をつくる、「小さい傘や」の取り組み

ーまずは会社の歴史について教えてください。


1999年9月に創業して以来、墨田の地で数少ない日本製の傘を作る会社として、営業を続けています。日本で現在売られている傘のほとんどは中国製となっており、日本製の傘の生産比率は1%程と言われています。

傘が季節性の商品であることや、日本の職人さんの後継ぎ不足等により、30年前から徐々に傘メーカーの生産拠点が中国に移り、そこでたくさんの傘が製造され、安価で手に入るようになったことが大きい要因だと思います。直近においては、コロナ禍で出かける機会も減り、傘の需要が減っていることも要因のひとつと考えます。

ーわずか1%!!国産の傘の割合がそこまで少ないとは思いませんでした。そんな中、国内生産にこだわって傘の販売を続けられている理由は何なのでしょうか。


傘づくりにおいては、生地を加工する職人さん、裁断や縫製をする職人さんなど、それぞれのパーツごとにたくさんの職人がいます。そのひとりひとりの仕事がなくなってしまう危機感を常に感じながら、「日本製の傘を作る小さな傘や」の難しい挑戦でした。

日本製の細やかな対応に価値を見出し、長い年月を共にした信頼できる職人さんたちと一緒に、「今、私たちにできる最良な傘をつくる」という思いで頑張ってきました。これからも「職人がつくるスタイリッシュでエレガントな傘」を作り続けたいと思っています。

ーすみだモダン認定承認の「東京職人」や墨田区のものづくりコラボレーションで誕生した「ベジタブレラ」などユニークな傘も販売されていますね。


ベジタブレラが生まれたきっかけは、スカイツリー開業時の墨田区のものづくりコラボレーションに応募し、美術大学の学生さんが描かれた絵本を見せていただいたことでした。「TOKYO DESIGNERS WEEK 2009」学生展の「Green Life」というテーマで取り組まれた作品です。


絵本の中のこんな傘があったらいいのにと描かれていたのが「レタスの傘」だったのです。可愛くて面白いアイディアに惹かれ、その「レタスの傘」を作りたい!という思いで取り組み、スカイツリーの開業と同時期に販売が実現しました。


本来傘は、綺麗な曲面ほど美しい傘と言われるのですが、ベジタブレラはレタスっぽく見えるようにあえてシワのあるデザインにする必要がありました。「折り畳んだ時も綺麗に畳まなくてもよい」ことは画期的な発想であり、「レタスのやわらかなフリルや玉のように水を弾くみずみずしさを折りたたみ傘で表現したい」という作家の思いをのせた傘づくりは、これまで大事にに思っていた傘づくりと「真逆の発想」で私たちにとって難しく、新しい挑戦でした。

日本の未来も考慮した、嘘のないものづくり

ーコロナ禍で傘の需要が減ったという話がありましたが、どのようにその時期を乗りこえられたのでしょうか。


コロナをきっかけに傘以外の商品、アクセサリーや雑貨等の商品開発にも力を注ぎました。
傘生地を使用した雑貨の取り組みは、今までは時間もなく、なかなか商品には辿り着かないものが多かったのですが貴重な機会と思い、職人と時間をかけて納得のいくカタチやデザインを追求しました。
傘の生地は、通常の雑貨を作る生地と比べて薄く、防水加工も扱いにくい要因になりデメリットとなりますが、一方で他の生地とは違う伸縮性があり伸縮してもほつれにくいという大きなメリットがありました。


傘のカタチのピアスは、傘生地で作ることにこだわり、すべての傘とお揃いにすることができます。UV加工した麻や綿の日傘の生地は、重ねて使い(通気性と保湿性、洗濯できてすぐに乾く、UV加工付き)の立体マスクになりました。

ー厳しい状況下であっても、開発や販売において大事にされていることはありますか。

嘘のない商品作り、そして未来を見据えた商品作りをずっと大事にしてきましたし、それはこれからも変わらないと思います。

例えば、お客様の中には撥水加工が長く続く傘を希望される方もいらっしゃいますが、撥水加工に使用する薬品の多くは環境保護のことを考えると好ましくないものが多いのも事実。


お客様はより良い機能をお求めだと思いますが、本来、傘は雨をしのぐ為のもの。壊れない・使いやすいデザインを目指して工夫をしていることはきちんと伝えた上で、日本の未来のことを考慮した上でその時考えられるベストな選択をしていることもお伝えして理解いただくようにしています。

ーたくさんの機能を付加できることは可能でも、未来の環境のことを考えてあえて付加しない判断をする、と。


そうです。傘をご購入いただいた方へは、使い続けていただくためのサポートをさせていただきます。傘の骨が折れてしまったり生地に穴があいてしまっても、「捨てる前に」ご相談いただければ、元気な骨、まだ使える生地、持ち手を活かした修理のご提案をさせていただきます。

日本で傘を作り続けるという、当たり前だけど難しいことへの挑戦

ー最後になりますが、今後の目標や挑戦したいことがあれば教えてください。


これからも東京で変わらず傘を作り続けること、それが今後の目標です。変化の多い今の時代、変わらないでいること、同じことを続けることの難しさを実感しています。

たくさんの人の力が集結するからこそ作ることのできる傘。今後も日々努力し、楽しい「傘づくり・ものづくり」を続けていきたいと思っています。日本の1%の傘づくりを守れるように。

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文・構成/松本佳恋

このコラムを書いた人

楠 美冴登

スタイルストア バイヤー

楠 美冴登

ショッピングユニットでバイヤーをしています。 スタイルストアの商品によって、どこかで誰かがちょっとだけ幸せになればいいなと思ってバイイングをしています。それだけが私の大きなこだわりです。

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