インタビュー&ゲストコラム

SAVON de SIESTA 附柴彩子さんインタビュー vol.1 石鹸のつくり手になるまで

2017年04月07日更新

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スタイルコラムの人気コーナーの一つ、つくり手インタビュー。今回は、北海道で手づくり石鹸をつくる「SAVON de SHIESTA(サボンデシエスタ)」代表・附柴彩子さんにお話をうかがいます。

全4回でお届けするこのインタビュー。第一回は、附柴さんが石鹸を中心とするスキンケアアイテムのブランド「サボンデシエスタ」を始めるきっかけとなったエピソードをお届けします。

ずーっと昔までたどっていくと、そこにあったのは、幼いころお母さんに読んでもらった「大草原の小さな家」でした。

子ども時代のワクワクが、石鹸づくりの原点

サボンデシエスタは北海道・札幌市内に店舗と工房を併設した「シエスタラボ」を構え、熱を加えないコールドプロセス製法で丁寧に石鹸をつくる会社です。

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その代表を務めるのが、今回ご登場いただく附柴彩子さん。

スタッフを率いながら、店舗に立ち、商品を企画し、プライベートでは妻であり、5歳の娘さんをもつお母さんでもあります。

このインタビューではお話をしてくれる方の愛用品を紹介していただいており、附柴さんも北海道からたくさんの品々を用意してくださいました。

その中には書籍『大草原の小さな家』が。

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西部開拓時代のアメリカを舞台にした「大草原の小さな家」。

実はこちら、附柴さんのお母様が持っていた本ということで、かなり年季の入った一冊。幼稚園に通っていたころ、毎晩少しずつ読んでもらっていた、思い出の本なのだそうです。

中でも、ストーリーの中にちりばめられた、洋服や食べ物などを「自分たちで作る」というエピソードにワクワクしたと語る附柴さん。「私もいろいろなものを自分でつくってみたい」と強く憧れたことを、今でもよく覚えているのだとか。

「今、石鹸づくりを仕事にしているのも、そのころに感じた、自分の手で何かを生み出すことで、胸が高まるような気持ちが原点になっていると思います」

と、愛おしそうにこの本を見つめるまなざしが印象的でした。

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「化学変化」への興味を胸に、大学院に進学

ものづくりへの憧れを胸に、幼少期の附柴さんはお菓子づくりに熱中しました。ただ、その過程で興味を持ったのは、「焼きあがるまでの形状の変化」。

「つくったり食べたりするよりも、クッキーやケーキがオーブンの中でカタチを変えていく様子を見ているのが好きでした。だから何十分もオーブンの前で焼きあがる様子を見つめていた、ちょっと変わった子だったかもしれません(笑)」

小麦粉と卵とバターが混ざり合い、熱を加えることで形状が変わる。そんな「化学変化」に興味を持ち、大学は北海道大学の理学部へ。研究に没頭する4年間を過ごし、さらに大学院に進みます。

休学期間に働いたカフェでの出会いが転機に

しかし、研究は試行錯誤の連続。答えが見つからず、思ったとおりに事が進まないという、これまでにない挫折を味わったことや、研究室にこもりきりの日々に疑問を感じ、大学院1年生の4月に(!)なんと一年間の休学を決意。

その一年間で何をしようと考えたときに、子どものころお菓子づくりが好きだったことを思い出したこと、人に喜ばれることを仕事にしたい、との想いを叶えるべく、カフェで働くことに。

ギャラリーを併設したそのカフェでは、この後の附柴さんの人生観を変える出会いや気づきがたくさんありました。

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直営店シエスタラボの店内からは石鹸づくりの様子を覗き見ることができます。お隣は、北海道の有名珈琲店「モリヒコ」さんのカフェという素敵な立地。

ギャラリーで展示される作家さんたちは、さんが今まで過ごした大学のキャンパスの仲間とは、また違う生き方をしていました。好きなことを仕事にし、輝いている作家さんの姿に、大きなカルチャーショックを受けると共に、自分が歩むこれからの人生は、そんな作家さんたちのようでありたいと思ったのだそう。

お菓子づくりのワクワクが、石鹸づくりに

とはいえ、具体的に何を仕事にしたいかはその段階ではわからなかったため、当初の予定通り大学院に復学。再び研究に明け暮れる日々に戻りました。

そんなある日、書店で石鹸づくりの本をたまたま手に取ります。

「そういえばかつて、大学の仲間が“彩子ちゃん絶対こういうの好きだと思うよ”と石鹸づくりの本を紹介してくれたのを思い出しました。そのときは“ふーん”と思う程度だったのですが、当時ちょうど肌荒れに悩んでいたこともあって、読んでみたら、ものすごくハマってしまって・・・お菓子づくりに通ずるおもしろさを感じたんです」

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サボンデシエスタの商品たち、原料にはできる限り北海道内のものを使用している3650

小麦粉と油を混ぜてできるクッキーやケーキのように、石鹸は、「アルカリ」と「油」を混ぜ合わせた化学変化によってつくられること。

丁寧に手づくりした石鹸を使い始めたところ、肌のコンディションが改善したこと。

自分が作った石鹸をプレゼントすると、お菓子をプレゼントしたときのように誰もがとても喜んでくれたこと。

点在していた、附柴さんの「やりたいこと」が一つにつながった瞬間でした。

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「石鹸屋さん」になるためには許可が必要であることもわかり、卒業後は大手製薬会社に就職します。会社員生活の間に薬事法などを学び、石鹸を製造販売するために必要な法的手続きの知識を取得。2年で退職し、北海道に戻って2005年にサボンデシエスタを立ち上げました。

WEB販売からスタートし、現在では札幌の人気エリアに店舗を構えるまでに成長。附柴さんは百貨店の催事や、もみじ市への出展など引っ張りだこで、また経営者として札幌と東京をはじめ全国を行き来する、多忙な毎日を送っています。

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附柴さんが「石鹸屋さん」になるまでのエピソードからは、たくさんの寄り道をしながらも、それぞれの場所でしっかりと今に続く糧となる何かを得ていることがわかります。

寄り道は、ともすると「無駄だった」ととらえがちですが、どんな経験も今に活かすことができのるは、附柴さんの素直な人間性のなせる業のように感じました。

次回は、附柴さんがサボンデシエスタに込めたフィロソフィーについてお届けします。なんと、附柴さんが販売したいのは「石鹸」そのものではないのだそうです!気になるその理由とは…!?どうぞお楽しみに。

SAVON de SIESTA 附柴彩子さんインタビュー

vol.1 石鹸のつくり手になるまで

vol.2 石鹸を通して届けたい2つのこと

vol.3 真珠肌に導くモリンガオイルの魅力

vol.4 日々を楽しむための愛用品と、無駄を省く時間術