バイヤーからのお便り

これぞ一生もの、鉄瓶と持ち手にまつわる話

2023年12月26日更新

こんにちは、バイヤーの畠田です。

岩手の南部鉄器と並んで称される山形鋳物のブランド「鋳心ノ工房(ちゅうしんこうぼう)」が作るティケトル。日々飲むお湯がまろやかでおいしくなり、鉄分摂取もできるという昔ながらの鉄瓶の良さはそのままに、IHを使えるようにしたり、持ち手を使いやすくしたり、と現代に合った仕様にしたものです。

こちら、ハンドルの素材を「木」と「鉄」から選ぶことができるのですが、木ハンドルは持ち手が熱くなりにくく素手で掴める一方、鉄ハンドルは素材の特性上、本体と一緒に熱くなってしまいます。じゃあ木ハンドルの方が良いのでは?と思われるかもしれませんが、鉄ハンドルのお取り扱いをはじめた経緯とそれぞれの特徴をお伝えしたいと思います。

より「長く使う」ことを見据えた仕様に

木のハンドルの一番の良さは、持ち手が熱くなりにくいこと。加熱しても素手で掴むことができます。その点、鉄ハンドルは、加熱すると持ち手も熱くなるため、持つ時には布巾などを巻いて持っていただく必要があります。

それなら選ぶのは木ハンドル一択では?と思われるかもしれません。それでも鉄ハンドルのお取り扱いを始めたのは、耐久性が理由です。「火はごく弱火にする」「水で丸洗いをしない」など、使い方に気を付ければ、木ハンドルでも大きなダメージを受けることは少ないのですが、素材の耐久性だけで考えると、鉄鋳物に比べて木は必ず先に劣化してしまいます。本体はまだまだ使える状態なのに、ハンドルが先に傷んでしまう、ということが起こるんですね。

当店でティケトルのお取り扱いを始めて早数年。実際に、お買い求めくださったつかい手から、「木のハンドルが外れてしまった」とご連絡をいただいたことがありました。愛用のティケトルのお写真を拝見すると、ハンドルと本体の接続部分が傷んでしまっていました。

つくり手の鋳心ノ工房さんにお話しを聞くと、薪ストーブで長年使っていて全く問題がないという方もいれば、交換が必要になる方もいるとのこと。 素材の耐久性上、どれだけ大切に扱っていただいても傷んでしまうことはありますし、火と水を使う道具なので、使い方次第でどうしても状態の差が出てしまいます。つかい手からは、「長く使いたいからこそ、同じ使い方でも傷みにくいハンドルにしたい」とのご要望をいただき、耐久性に優れた鉄ハンドルに持ち手を交換をさせていただく流れになりました。

このつかい手のように、鉄ハンドルを選びたいという方もいらっしゃるのでは、ということで、ご購入時に鉄ハンドルをお選びいただけるようにいたしました。木は熱くなりにくいけれど、鉄よりも耐久性には劣る。鉄は熱くなるけど、傷みにくい。見た目のお好みで選んでいただいても良いですが、それぞれの素材の違いによる特徴も踏まえてご覧いただければと思います。

ハンドルは交換も可能です

ちなみに、木ハンドルのティケトルを購入すると、製品と一緒に六角レンチが同梱されています。これは決して組み立てが必要なわけではなく、いずれ持ち手やつまみを交換することも見据えて、ティケトルが作られているからです。

つくり手の鋳心ノ工房さんからハンドルだけをご購入いただくことができるので、木ハンドルが使っているうちに傷んでしまった、やっぱり鉄ハンドルに変えたい、という場合は、ご自身で付け替えていただくことができます。

※木ハンドル→鉄ハンドルor木ハンドルはお客様ご自身で交換をいただくことができますが、鉄ハンドル→木ハンドルはつくり手側での交換が必要です。そのため鉄ハンドルには六角レンチが付属していません。

木ハンドルで特に気を付けていただきたいのは、IHではなく直火をご使用の場合。先にも少し書きましたが、「火は底面につかないくらいごく弱火にする」「水で丸洗いしない」のが使用上で気を付けるべきポイントです。

つくり手が30年間毎日使っているという鉄瓶の内側。錆びてしまっても問題なく使えます。

ここまで散々お取り扱いの注意点をお伝えしてきたうえに、鉄瓶は「錆びやすい」というイメージもあり、扱いがとても難しそう……と思われるかもしれません。でも、ハンドルは傷んでしまっても取り替えられますし、本体は錆びてしまっても大丈夫。沸かしたお湯に鉄っぽさはなく問題なくお使いいただけますし、よっぽど錆びて金気(かなけ)が出てしまっても、緑茶で何度か煮出す、など対処方法があります。「水を残したままにしない」という点にさえ気を付ければ、特別なお手入れは必要なく、一般的なケトルと同じ感覚でお使いいただけると思います。

なにより、ステンレスのケトルや電気ケトルには「水を沸かす」以上の機能はありませんが、鉄瓶は「沸かすだけでなく美味しくしてくれる」というのが他には替えられないポイントですよね。

当店スタッフ2人に「ティケトルで沸かした水道水」と「電気ケトルで沸かした水道水」を、どちらか伏せて飲み比べしてもらったことがありますが、二人とも即答で見事正解。電気ケトルで沸かした水道水も特段カルキを強く感じるわけではないのですが、飲み比べるとティケトルで沸かしたものは明らかに癖がなく、飲みやすく感じました。「お湯がまろやかになる」「やわらかくなる」というのはこういうことなんだな、と実感します。

飲み物をおいしくしてくれる、鉄鋳物のケトル。 「一生ものの道具」とはよく言いますが、これぞ本当に長く愛用できる一品です。

このコラムを書いた人

畠田 有香

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畠田 有香

ショッピングユニットでバイヤーをしています。その商品のどこが良いのか、なぜ良いのかを、わかりやすくみなさまにお届けしたいと思っています。

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