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職人の技術にスポットを!老舗アクセサリーメーカーの情熱

2022年05月25日更新


墨田のロウ付け職人が、小さなパーツたちを手間暇かけて組み立てることでできるアクセサリーのブランド、builderino(ビルダリーノ)。手作業だからこそ、同じデザインでも異なる表情が楽しめるのが特徴で、効率重視で大量生産されるものとの違いは一目瞭然です。ブランドの立ち上げから今日にいたるまでのお話を、株式会社アクセサリーマルタカの企画部長、木村さんにお話をお伺いしました。

マルタカならではとは?の答えがビルダリーノ

ーまずはブランド立ち上げの経緯から教えてください。


木村さん:もともとは最小ビーズと言われるチェコビーズを使ったアクセサリーや雑貨作りを考えていました。そこで、高い技術力を持った墨田区の事業者と、世界で活躍するデザイナーやクリエイターとのコラボレーションにより、自社商品の開発等を行う事ができる「ものづくりコラボレーション」事業に応募していたんです。応募後、デザイナーとマッチングし、ともに商品開発を進めました。

当初、販売を考えていたという総ビーズのバッグ。全面に大小異なるビーズがぎっしりと刺繍された贅沢な一品。


しかし、私たちが考えていたアイテムを形にするとなると、コストと時間がかかりすぎて、販売するのが難しいという問題に直面したんです。そこで、切り口を変えて商品開発ができないかと考えなおしました。マルタカならではの特徴は何かと考えた時に思いついたのは、歴史ある会社だからこその技術。これまでの技術を活かしたオリジナルのアクセサリーブランドとしてビルダリーノは生まれました。

ー具体的にはどのような技術が使われているのでしょうか。


木村さん: ティアラを作るのに最適と言われるロウ付けの技術です。ロウ付けの技術を使うことで、型抜きでは作れない細かくて独特なデザインのアクセサリーを作ることが可能になります。


手作業でロウ付けを行うので、モチーフとモチーフの間にちょっとした隙間が生まれます。1個のアクセサリーの中にも空間を感じる事ができる、そんなアクセサリーを作ることができます。

ーその技術において、マルタカならではのポイントはどこになりますか。


木村さん: ロウ付けにおいて胡粉を使用している点です。胡粉とは白粉に使われている、貝殻を粉末にしたもののことで、これをロウ付けする際に使う職人は実は限られています。


木村さん: マルタカの創業は1925年。当時はまだ和装が主流の時代だったため、アクセサリーではなく飾り櫛などを製造していました。その際に、様々な金属のパーツをロウ付けしており、火の当たり具合を統一する方法として胡粉を使用していたのです。

100周年を目前に独自ブランドを立ち上げ

ー2025年で創業100周年を迎えられるとのことですが、創業からの技術を活かしてできたのがビルダリーノなのですね。ブランドを立ち上げてみていかがでしたか。

木村さん:墨田区で100年近くやってきましたが、改めて、自社の歴史や技術と向き合ういい機会となったと感じています。アクセサリーのメッキコーティングに当たっては協力工場のお力添えもいただきました。独自の技術だけではなく、これまでの地域や企業との繋がりがあったからビルダリーノが生まれたことがとても嬉しいです。

ーとは言いつつも、大変な点も多かったことかと思います。

木村さん:これまでマルタカはアパレルブランドさんと一緒にモノづくりを行ってきたので、ビルダリーノはマルタカ初の、そして唯一のオリジナルブランドになります。生産効率や低価格がアパレルブランドとのモノづくりでは求められる中、職人が手作りで作るビルダリーノは時代と逆行しており、大変と感じる部分もありました。

木村さん:手作業で作る分、工賃がどうしても高くついてしまう点については、素材を金や銀ではなく、真鍮を使用することで解決しました。高い技術と、カジュアルで身近な素材を組み合わせることで、日常的に使っていただけるアクセサリーになったと思います。

ー手作業で作っているということは、販売できる数にも限りがあるということですよね。


木村さん:そうですね。でもそこがビルダリーノの特徴であり、魅力だと思っています。同じデザインのアクセサリーを持っている人が世の中に1人しかいない訳ではありません。でも、一方で大量生産ができないからこそ、1000人の方が持っている訳でもないんです。同じデザインでも、手作りだからこそ生まれるちょっとした表情の違いが楽しめる、そんな他のブランドにないビルダリーノならではの特徴を楽しんでいただけたらと思います。

ー大きな方向転換等、大変なこともあった中、それでもブランド立ち上げを進めることができた理由は何だったのでしょうか。


これまで表に立つことのなかった職人さんにフォーカスを当てることで、職人さんが喜んでくれたことは大きかったです。実際に展示会に出展した際、職人さんがアクセサリーをどのように作っているかなどをまとめた動画を作成したら職人さんにとても喜んでいただけたんです。

また、ビルダリーノ立ち上げは古くからあるロウ付けの技術をたくさんの人に知ってもらう良い機会となると信じていました。作り手や技術にスポットを当てているアクセサリーブランドはまだまだ少ないので、今後もその発信は続けていきたいです。

ー最後になりますが、ビルダリーノが今後解決したい課題や展望などがあれば教えてください。

今の課題は後継職人の発掘と技術の継承です。ビルダリーノの職人さんはすでに70歳を超えているため、今後長くこのブランドを続けていくにあたっては技術を受け継いでくれる職人を見つけないといけません。

後継者が決まるまでの間は、職人に無理のない範囲でブランドを継続させていく予定です。今後はもともとマルタカが仕入れていたチェコビーズを組み合わせたアクセサリーやマルタカだからこそ取り扱えるパーツとマッチした新商品も出せたらと思っているのでぜひ楽しみにしていてください。

アクセサリーに使われている技術と職人の思いを知れば、誰もが手にしたいと感じるアクセサリーだと思います。効率度外視だからこそ実現する唯一無二のアクセサリーが、多くの方の目に留まり、つくり手とつかい手の両者の気持ちが満たされる、そんな時間が長く続いていくのだと思います。

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文・構成/松本佳恋

このコラムを書いた人

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